生き残るために…

 母が死んでから5年間はストリートチルドレンとして生活していた。
【ストリートチルドレンとは、家族が死に保護をうけられずに明日をも知れぬ生活をしている子供たちのこと】
 その間に戦争は終結したらしい。無論、完敗だ。そのせいで、国内は不況のどん底。町では僅かに生き残った金持ちどもが車を走らせている。寂れた建物の横には無数に横たわる餓死した国民。
 グライトは意地でも生きようとした。他にもストリートチルドレンの連中がごろごろしていたので、足の速そうなやつ、力のありそうなやつ、ずる賢そうなやつ。そんなやつらを集めてグループを結成した。【SURVIVE】…生き残る、それがこの単語の意味だ。取り敢えずサバイブとでも呼んでおこう。
 グライト率いるサバイブは、生きるためには殺し以外の手段をなんでもとった。当然のことながら窃盗、詐欺、時には食い逃げなんかもやって飢えを凌いだ。ちなみに詐欺とは、自ら撒いたまきびしモドキで金持ちたちの車をパンクさせ、そこに偶然居た修理屋の手伝いをしてる者だと言って、適当に空気を入れてバンソウコウなんかで穴を塞いで金を巻上げていた。
 しかし、すぐにサバイブの悪事に対応するべく警官隊が見回りをするようになった。その時点で、これ以上の活動は不可能と考え解散した。
 また新しいグループを作ろうか、などとグライトは考えていた。だが、そうはしなかった。これ以上、ただでさえ苦しい人達を苦しめるわけにはいかないという良心が彼を止めた。
 サバイブ解散から1週間。グライトは、配給車が配るパンやおにぎりを身軽さを利用して毎日手に入れていた。食料には困っていなかった。しかし辛かった、自分を助けてくれる者が一人たりともいない不安から、寂しさから、悲しみから…どれもこれもがグライトを押し潰さんと圧し掛かってくるのだ。
 そんな精神不安状態のグライトの前に一人の男性が居た。男性はグライトを見るとはっとして歩み寄ってきた。
「君は…いや、お前はグ、グライトか?」
 その声に聞き覚えがあったグライトは、誰なのか確認しようと目をこらしてみた。そしてしばらくして気付いた。それは紛れも無く、戦死したはずの父であった。


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